経理業務の全体像を把握する
経理とは何をする仕事か?
経理とは、会社のお金の流れを記録・管理し、経営判断や税務申告の基礎となる情報を整える仕事です。具体的には、売上や支出を記録し、帳簿にまとめ、決算書や確定申告書を作成するまでの一連の業務を指します。
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日次業務(毎日発生する作業)
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領収書・請求書の整理
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現金・銀行取引の記録
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仕訳入力
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月次業務(月ごとにまとめて行う作業)
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売上・経費の集計
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試算表の作成
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給与計算・源泉税の納付
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年次業務(年に一度の作業)
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決算書の作成(損益計算書・貸借対照表など)
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確定申告
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年末調整・法定調書の作成
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小規模企業に必要な最低限の業務内容
新しく設立したばかりの企業では、まだ取引量も少なく、全ての業務をフルスペックでやる必要はありません。以下の業務が最低限押さえておくべきポイントです。
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現金と預金の出入りの管理
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経費の記録(領収書の保管)
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売上・入金の確認
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請求書の発行と管理
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会計ソフトへの入力
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税務署・自治体への提出書類の準備
毎日・毎月・毎年発生する業務の分類
頻度 主な業務内容
毎日 領収書の整理、取引の記録、メールチェック
毎月 試算表作成、請求書発行、給与計算、税金納付
毎年 決算、確定申告、年末調整、法定調書の作成
業務をこのように分類しておくことで、いつ何をすべきかが明確になり、業務の抜け漏れを防ぐことができます。
必要な会計ソフト・ツールの選定
クラウド会計ソフトを使うべき理由
経理業務の効率化には、クラウド会計ソフトの導入が非常に有効です。従来のExcelや手書き帳簿に比べ、以下のようなメリットがあります。
自動化が進んでいる:銀行口座やクレジットカードと連携し、自動で仕訳を作成
どこからでもアクセス可能:インターネットがあれば、会社外からでも操作可能
専門知識がなくても使いやすい:初心者でもわかりやすい設計になっている
税理士とデータ共有が簡単:リアルタイムで同じデータを確認できる
主なクラウド会計ソフトの比較
ソフト名 | 特徴 | 料金の目安(法人向け) |
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freee会計 | 初心者に優しいUI、給与や労務とも連携可 | 月額2,680円〜 |
マネーフォワードクラウド会計 | 分析・レポート機能が豊富、他の業務ツールと連携可能 | 月額3,980円〜 |
弥生会計オンライン | 会計知識のある人向け、伝統的な操作性 | 月額2,400円〜(セルフプラン) |
どれを選んでも大きく失敗はしませんが、「操作性」「サポート」「税理士が使い慣れているか」を基準に選ぶと良いでしょう。
銀行口座・クレジットカードとの連携
経理業務を効率化するには、会社専用の銀行口座やクレジットカードを用意し、会計ソフトと連携させましょう。
口座連携:自動で入出金データを取り込み、仕訳が半自動で作成される
クレカ連携:経費精算が楽になり、領収書の突き合わせが簡単に
また、可能であれば「電子明細が出る金融機関」を選ぶとより便利です。たとえば楽天銀行、GMOあおぞらネット銀行などは会計ソフトとの相性が良好です。
エクセルなど補助的な管理ツールの活用
会計ソフトだけではカバーしきれない情報(未払金一覧や納税スケジュールなど)は、ExcelやGoogleスプレッドシートで管理するのが効果的です。
補助的に管理すべき情報の例:
- 未払請求書リスト(支払予定日つき)
- 税金納付予定表
- 現金管理表(現金払いを行う場合)
このような資料を作っておくと、資金繰りの把握や経営判断にも役立ちます。
業務フローを設計する
なぜ業務フローが必要なのか?
新規設立の会社では、最初に経理の業務フローをしっかり設計しておくことが、効率的な運営と人的ミスの防止につながります。業務が属人化せず、将来的にスタッフを増やす際の引き継ぎもスムーズになります。
ここでは、経理の基本業務を「領収書・請求書の処理」「現金・預金管理」「月次決算」に分けて、具体的なフローを見ていきます。
領収書・請求書の収集から仕訳までの流れ
領収書・請求書の収集
- 経費精算用のフォーマットを用意し、紙の領収書は月末にまとめて提出
- メールで届く請求書は、専用フォルダに保存(クラウドストレージ推奨)
チェックと分類
- 支出・収入の種類ごとに分類(例:旅費交通費、交際費、通信費など)
- 支払先や金額、支払日を確認
会計ソフトへの入力/連携データの確認
- 手動入力または自動連携されたデータの確認
- 誤った仕訳がないかレビューを行う
証憑の保存
- 電子帳簿保存法に対応した方法で、PDFやスキャンデータを保管
現金・預金管理の手順
1:現金出納帳作成(現金を使う場合)
・出金ごとに金額・用途を記録
・月末に現金残高を実物と照合
2:銀行口座の管理
・入出金を週1回以上は確認
・入金の消込(売上との対応付け)を行う
・通帳やオンラインバンキングの明細はPDFで保存
3:クレジットカード利用明細の取り込み
・月ごとの利用内容を会計ソフトに取り込む
・利用明細と領収書の突き合わせ
月次決算とレポート作成の手順
1:すべての取引を締める
・その月の仕訳がすべて入力・確認されたことをチェック
2:試算表を作成
・会計ソフトで自動生成される「試算表」を出力
・異常値がないか(売上ゼロ、費用の偏りなど)を確認
3:月次レポート作成(任意)
・売上・利益の推移、資金残高、未払金などをまとめる
・社内で共有して経営判断に活かす
経理フローを「誰が」「いつ」「何をするか」まで明確にし、手順をマニュアル化することが重要です。これにより、引き継ぎや属人化リスクも減少します。