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なぜ経理は後回しにされがちなのか?
社長はとにかく忙しいものです。
営業、採用、現場対応、クレーム処理、資金繰り…。
ひとつの会社を回すだけで、毎日が「火消し」のような状態になりがちです。
そんな中で真っ先に後回しにされるのが 経理 です。
- とりあえず売上を作るほうが重要
- 帳簿なんて暇なときにやればいい
- 経理はお金の出し入れを記録するだけだろう
こう思って後回しにしてしまう社長は少なくありません。
しかし、経理を放置するほど、後から確実に大きなツケが回ってきます。
そのツケは、単なる「作業量が増える」レベルではなく、
会社の存続や成長に直結するほどのダメージ になることもあります。
この記事では、
経理を後回しにする社長が、あとで必ず後悔する3つのこと
について、具体例を交えながら解説します。
資金繰りが読めず、突然の「お金が足りない」が起きる
経理を後回しにすることで、最も大きなダメージとなるのが
資金繰り(キャッシュフロー)の把握ができなくなること です。
会社が倒れる原因の多くは、赤字ではなく、
実は「黒字なのにお金がない」という 黒字倒産 にあります。
- 経理を放置すると、今の“お金の状態”がわからなくなる
経理は、単に数字をまとめる作業ではなく、
「会社のお金の健康状態を可視化する仕組み」 です。
しかし、社長が経理を後回しにすると、
- 入金予定
- 出金予定
- 手元資金の残高推移
- 支払いの期限
これらが正確に把握できない状態になります。
その結果、気づいたら…
- 支払いが重なっていた
- 税金の引き落とし日が近づいていた
- 作業は忙しいのにお金が増えていない
といった状況に陥りやすくなります。
- 突然の支払いが“致命傷”になることも
経理を後回しにしている会社ほど
「ある日突然、口座残高が足りない」 という事態が起きます。
よくあるケースとしては、
- 消費税や法人税の支払い
- 仕入れの支払い
- ボーナス支給
- クレジットカードの引き落とし
- 社会保険料の支払い
こうした定期的な支払いが、
経理をしていないとスケジュール管理から漏れてしまうのです。
特に税金の支払いは、額が大きくなりがちで、
支払い日直前になって慌てて資金繰りに走る社長も少なくありません。
- 売上が伸びていても資金ショートする理由
「売上が順調に伸びているのに、なぜかいつも資金が苦しい…」
こうした会社の多くは、
経理が後回しになっている結果、キャッシュフローの悪化に気づけない
という共通点があります。
例えば、
- 売上の入金は2ヶ月後
- でも仕入れは先に支払い
- 広告費は毎月カードで引き落とし
- 税金は利益に比例して増え続ける
このように、事業は伸びているのに、
“先に出ていくお金”のほうが多いという状態はよくあります。
もし経理がしっかりしていれば
・入金と支払いのタイミング
・利益と現金の差
・税金の予測
などが事前に把握できるため、適切な資金繰りが可能です。
しかし、経理が後回しになると、
「気づいたら口座残高が危ない」 という状態になり、
最悪の場合は支払い遅延や資金ショートにつながります。
- 黒字倒産は“経理の遅れ”から始まる
黒字倒産の多くは、
「帳簿が遅れていた」「会社の数字を把握していなかった」という
単純な理由で起こります。
つまり、
経理を後回しにする行為そのものが、会社にとっての最大リスク
と言っても過言ではありません。
決算時・税務調査で痛い目を見る(追徴課税・罰金)
経理を後回しにしている会社の多くが、
決算の直前になって慌てて帳簿をまとめ始めます。
しかし、帳簿を後からまとめる行為には、
「重大なミスが発生しやすい」 という致命的な問題があります。
その結果、
税務署から追徴課税や加算税といった“痛い出費”が発生する
ことも珍しくありません。
- ミスの多い帳簿は税務署のターゲットになりやすい
税務署は“怪しい会社”を重点的にチェックします。
その特徴のひとつが 記帳が雑・遅い会社 です。
典型的な例としては、
- 領収書がまとめて出てくる
- 計上時期(どの月の売上にするか)がバラバラ
- 現金出納帳が合わない
- 仮払金がずっと残っている
- 経費科目が適当につけられている
これらはすべて、
「経理を後回しにしていた会社」の典型的な状態 です。
税務署はこうした“不自然な数字”を見逃しません。
- 領収書の紛失は、最も高額なミスになる
後から帳簿をつけると、
最もよく起こるのが 領収書の紛失 です。
領収書がない支出は、原則として経費として認められません。
つまり、
- 経費にできない
- その分、利益が増える(と見なされる)
- 結果として税金が増える
という三重苦になります。
特に頻繁に利用する、
- タクシー
- 接待交際費
- 小額の購入品
- 出張時の飲食
などは紛失しやすく、
積み重なると数十万円〜数百万円の税金増加につながることもあります。
- 計上時期のズレが“重大な税務リスク”になる
経理を後回しにすると、
「この売上はどの月のものだっけ?」「どの経費と対応していた?」
といったことが曖昧になり、記録にもズレが生じます。
これは税務的に非常に問題で、
- 本来の損益が歪む
- 売上漏れが疑われる
- 経費の付け替えと見なされる
といった形で税務署から指摘されやすくなります。
特に「売上の計上漏れ」は、税務署が最も厳しくチェックするポイントで、
悪質と判断されれば 重加算税(最大40%) が課されることも。
- 想定外の追徴課税が資金繰りを直撃する
経理を後回しにして帳簿が雑になっていた会社ほど、
税務調査での指摘が多くなり、
追徴課税・加算税・延滞税 といった追加の支払いが発生します。
そして、この“想定外の出費”こそが危険です。
- せっかく蓄えた現金が一気に減る
- 手元資金が少なくなり、翌月の支払いが苦しくなる
- 追加の税金で資金繰りが行き詰まる
最悪の場合、税金が払えずに分納するケースもあります。
これは会社の信用にも影響します。
つまり、
経理を後回しにすると、税務で痛烈なしっぺ返しを食らう
ということです。
経営判断を誤り、成長のチャンスを失う
経理を後回しにすると、
日々の資金管理や税務リスクだけでなく、
「会社の未来に関わる重大な機会損失」 を生みます。
経理の数字は、単なる記録ではありません。
社長が正しい経営判断をするための
“経営の羅針盤(コンパス)” です。
この羅針盤が狂うと、
会社の方向性そのものを誤ってしまいます。
- 経営の数字が見えないと、判断が「勘」になる
経理が後回しになっていると、
- 今月いくら利益が出ているのか
- どの事業が儲かって、どの事業が赤字なのか
- 人件費率が適正か
- 広告費の投資効果はどうか
- 固定費がどれだけ増減しているのか
こうした基礎的な経営数値が正確に把握できなくなります。
結果として、社長は
「勘」や「経験」だけで判断してしまう ようになります。
もちろん勘が働く社長もいますが、
数字なしの判断は精度が低く、
特に成長段階の企業では致命的です。
- 利益が出ているはずなのに“伸びない理由”がわからなくなる
経理が遅れている会社の社長がよく口にする言葉があります。
「売上は伸びているのに、なぜかお金が残らない…」
これは、
どこでお金が消えているのかを把握できていない
ことが原因です。
例えば、
- 広告費が想定以上に膨らんでいる
- 労務費(人件費)が利益を圧迫している
- 不採算のサービスが赤字を生んでいる
- 家賃やサブスク費用が積み上がっている
といったことは、
最新の経理データを見ればすぐにわかります。
しかし経理が遅れていると、
“数字の異変”に気づくのが数ヶ月〜半年も遅れます。
遅れて気づいた時には、
もう手遅れになっていることもあります。
- 未来の投資判断ができなくなる
事業を拡大するには、
- 新規採用
- 新商品開発
- 広告投資
- 設備投資
- 店舗拡大
- システム導入
など、必ず“先にお金を使う”判断が必要になります。
しかし、経理が後回しになっている会社は、
「今、どれくらい投資に回せるのか」 がわかりません。
数字が見えないと、社長は2つの極端な判断をしがちです。
- 必要な投資ができず、成長のタイミングを逃す
- 無理な投資をして、資金繰りを悪化させる
どちらに転んでも、会社にとって大きなマイナスです。
- 補助金・融資のチャンスも逃してしまう
正確な経理ができている会社ほど、
- 銀行からの信用が高い
- 補助金の採択率が高い
- 投資家から評価されやすい
- 融資の審査がスムーズ
など、多くのメリットがあります。
一方で経理が後回しになっている会社は、
- 決算書の数字が不安定
- 試算表が常に遅れている
- 銀行に提出する資料が揃わない
といった問題が重なり、
せっかくの資金調達のチャンスを逃してしまいます。
特に成長期の会社にとって、これらは致命的です。
- 経理を後回しにすると「未来の選択肢」が減る
まとめると、経理が遅れている会社は、
- 現状が見えない
- 異変に気づくのが遅い
- 投資判断ができない
- 調達のチャンスを逃す
という状態に陥り、
会社の未来の可能性そのものを閉ざす結果 になります。
つまり、
経理を後回しにすることは、
会社の成長スピードを自ら遅くしている ということです。
経理は“後回しにするほど損をする仕事”
経理は、忙しい社長にとって後回しにしがちな業務ですが、それを続けていると必ず大きな代償を払うことになります。経理を放置すると、まず資金繰りが見えなくなり、突然「お金が足りない」という事態に陥りやすくなります。また、帳簿のミスや書類の不備が増え、決算時や税務調査で追徴課税や罰金を受けるリスクも高まります。さらに、正確な数字がないまま経営判断を行うと、投資のタイミングを誤ったり、成長の機会を逃したりすることにもつながります。
つまり経理とは、単なる作業ではなく、会社の現状を把握し、未来の意思決定を正しく行うための“経営インフラ”そのものです。社長自身が経営数字を理解し、判断に活かしながら、日々の経理実務はスタッフや外部専門家に任せる。この仕組みを整えることで、会社は安定し、成長への土台が固まります。
経理を後回しにするほど会社のリスクは増え、整えるほど会社の可能性は広がります。今こそ経理を見直し、“数字で経営する会社”へと変わるタイミングなのです。