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「この案件、儲かってますか?」に答えられなくなった社長の話

たった一言の質問

月曜の朝。
いつもの定例会議。

営業部長が報告を終えたあと、ふと一人の幹部がこう尋ねました。

「この案件、儲かってますか?」

会議室の空気が一瞬、止まりました。

視線は自然と社長に集まります。
社長は少し考え込み、こう答えました。

「うーん……たぶん、出ているとは思うけど……」

その言葉は、どこか歯切れが悪いものでした。

沈黙が意味していたもの

売上は伸びています。
社員も忙しく働いています。
大型案件も次々と受注しています。

それなのに――
「儲かっているかどうか」が即答できない。

これは珍しい話ではありません。

多くの会社で、
売上は毎月しっかり追いかけているのに、利益は“なんとなく”しか把握していない
という状態が起きています。

売上と利益は違う

ここで、とても大切なポイントがあります。

売上:お客様から受け取る金額

利益:売上から経費を差し引いた“本当に残るお金”

売上が1,000万円あっても、経費が950万円かかっていれば、利益は50万円しか残りません。
さらに予想外のコストがかかれば、赤字になることもあります。

それでも、忙しさや売上の大きさに安心してしまう。
「これだけ仕事があるんだから大丈夫だろう」と思ってしまうのです。

社長の不安の正体

あのとき、社長が答えられなかった理由。

それは「数字がない」のではなく、
“正確に把握できていない”ことへの不安でした。

人件費はどこまで含まれているのか?

外注費は想定通りか?

見えないコストはないか?

頭の中では計算しているつもりでも、
根拠が曖昧なのです。

経営において、
「たぶん」は最も危険な言葉です。

この沈黙から、会社の本当の問題が浮かび上がってきました。

なぜ答えられないのか?よくある3つの理由

社長が「儲かっているかどうか」を即答できない。
それは能力の問題ではありません。

多くの場合、仕組みの問題です。

ここでは、特によくある3つの理由を解説します。

① 原価が正確に把握できていない

まず最も多いのが、「原価」が曖昧なケースです。

原価(げんか)とは、

商品やサービスを提供するためにかかった費用のことです。

原価には大きく分けて2種類あります。

直接原価:その案件に直接かかった費用
例)材料費、外注費、案件担当者の人件費など

間接費(かんせつひ):どの案件にも共通してかかる費用
例)家賃、水道光熱費、管理部門の人件費など

多くの会社では、直接原価はなんとなく把握しています。
しかし、間接費をどう配分(割り振り)するかが曖昧なのです。

結果として、

「材料費と外注費を引いたら利益は出てるはず」

という“ざっくり計算”で判断してしまいます。

でも実際には、人件費や管理コストが想像以上にかかっていることも少なくありません。

② 案件ごとの採算管理をしていない

2つ目は、「案件別損益管理」をしていないことです。

損益(そんえき)とは、

利益と損失のこと。
つまり、案件ごとに儲かったのか、赤字だったのかを把握する管理方法です。

よくあるパターンはこうです。

会社全体では黒字

でも、どの案件が儲かっているのかは不明

これでは、

儲かる案件を増やす

赤字案件を減らす

という経営判断ができません。

「全体でなんとか回っているから大丈夫」という状態は、
実はとても危ういのです。

③ 感覚経営に頼っている

3つ目は、いわゆる“感覚経営”です。

売上が伸びているから大丈夫

忙しいから問題ない

長年やってきたから勘でわかる

しかし、売上=利益ではありません。

たとえば、値引きをすれば売上は上がります。
でも利益は減ります。

案件を増やせば売上は伸びます。
でも人件費や残業代が増えれば、利益は圧迫されます。

感覚は経験から生まれますが、
数字は現実を映します。

この2つがズレ始めたとき、
経営は静かに危険な方向へ進んでいきます。

問題の本質

社長が答えられなかった理由は、

  • 原価が曖昧
  • 案件別の損益が見えない
  • 感覚に頼っている

という状態が重なっていたからでした。

そして、この状態が続くと、
次に起こるのが――

「黒字なのにお金がない」という現象です。

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