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記帳ミスが減らない会社が見落としている改善策

1.はじめに

経理・会計業務において「記帳ミス」は避けて通れない課題です。
請求書や領収書の数字を打ち間違えたり、仕訳勘定を誤って登録したりすることで、帳簿全体の整合性が崩れてしまいます。

一見すると「ちょっとした入力ミス」に見えるかもしれません。しかし、その影響は小さくありません。

  • 決算業務の遅延:誤った仕訳を探して修正するため、締め作業に余計な時間がかかる。
  • 税務リスクの増加:誤記によって申告内容に誤差が生じ、税務調査で指摘を受ける可能性が高まる。
  • 経営判断の誤り:数字の信頼性が低いと、経営陣が正しい意思決定を行えない。
  • 社内外からの信用低下:金融機関や投資家への説明に支障が出る。

多くの会社は、こうした問題を「担当者がもっと注意すれば防げる」と考えがちです。しかし実際には、注意力だけに依存する仕組みでは、ミスは減りません。

本記事では、記帳ミスがなかなか減らない会社が見落としがちな改善策を紹介し、仕組みでエラーを減らす方法を解説していきます。

2.記帳ミスが起こる典型的な原因

記帳ミスは単純な「不注意」だけでなく、業務の仕組みや環境によっても発生します。ここでは、特に多くの会社で見られる典型的な原因を整理してみましょう。

 

2-1. 手作業に依存した入力作業

請求書や領収書を、担当者が一枚ずつ目で確認しながら入力しているケースは少なくありません。
数字や勘定科目を手入力する工程が多いほど、打ち間違いや入力漏れのリスクは高まります。

 

2-2. ダブルチェックの形骸化

「入力担当者 → 上長確認」というフローを設けていても、実際には上長が十分に内容を確認せず、形式的な押印や承認で済ませてしまうことがあります。
これではチェック機能が働かず、誤記がそのまま通過してしまいます。

 

2-3. 会計ソフトや業務フローの活用不足

せっかく会計ソフトを導入していても、機能を使いこなせていない会社も多いです。
たとえば「仕訳テンプレート」や「自動仕訳機能」を設定せず、毎回ゼロから入力していると、同じパターンの仕訳で毎回ミスが発生する可能性があります。

 

2-4. 担当者教育の不十分さ

経理担当者が「なぜこの勘定科目を使うのか」を理解していない場合、正しい仕訳判断ができません。
特に新任担当者は、過去のデータをそのまま真似して誤った方法を引き継いでしまうことがあります。

 

💡 このように、記帳ミスは「担当者の注意不足」だけでなく、業務設計そのものに原因が潜んでいることが多いのです。

3.見落とされがちな改善策

多くの会社は「気をつけよう」「ダブルチェックを徹底しよう」といった対症療法で記帳ミスを減らそうとします。
しかし本当に効果があるのは、仕組みそのものを変える改善策です。ここでは見落とされがちな取り組みを紹介します。

3-1. 入力環境の整備

  • フォーマットの統一
    請求書や領収書のデータを、Excelやスプレッドシートで統一フォーマットにまとめてから会計ソフトへ取り込むようにすると、入力のばらつきを減らせます。
  • 入力ルールの明文化
    例えば「交通費は必ず勘定科目〇〇に統一」「日付は西暦で入力」など、細かいルールを明文化し、全員が同じ基準で処理できるようにすることが重要です。

3-2. システム活用(自動化の導入)

  • OCR(光学文字認識)
    領収書や請求書をスキャンして文字データに変換し、手入力を大幅に削減。
  • クラウド会計ソフト
    銀行口座やクレジットカードと連携して、自動仕訳を取り込む機能を活用すれば、入力作業自体を減らせます。
  • RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)
    定型的な仕訳やデータ転記を自動処理することで、ミスを根本から防止できます。

3-3. 業務フローの再設計

  • 承認ルートの簡素化
    無駄に複数の承認を経ると、かえってチェックが形骸化する恐れがあります。
    必要なポイントだけに絞ることで、確認の精度を高められます。
  • チェックポイントの最適化
    全件を詳細に確認するのではなく、金額の大きい取引や仕訳パターンが複雑な部分に重点を置くチェックを行うことで効率的に誤りを防げます。

3-4. 属人化の解消

  • 担当者のローテーション
    同じ人が同じ業務を続けると、慣れによる思い込みや「見落とし」が発生しやすくなります。
  • マニュアル整備
    誰がやっても同じ処理ができるよう、分かりやすい手順書を作成しておくことで、担当者交代時の引き継ぎもスムーズになります。

 

3-5. 定期的なフィードバック

  • ミスの傾向を可視化
    どんな取引で、どのような間違いが多いのかをデータ化することで、重点的に改善すべきポイントが見えてきます。
  • 改善サイクルの確立
    「入力 → チェック → 振り返り → 改善」という流れを習慣化することで、同じミスの再発を防止できます。

 

📌 これらの改善策を組み合わせれば、「注意力に頼らない」業務体制を作り上げることができます。

4.まとめ

記帳ミスはどの会社でも発生し得るものですが、その影響は決して小さくありません。決算の遅延や税務リスク、さらには経営判断の誤りにつながり、会社全体の信頼性を損なう可能性があります。

多くの企業は「担当者が注意すれば防げる」と考えがちですが、実際には人の注意力だけでは限界があるのが現実です。
ミスを減らすために重要なのは、以下のような仕組みづくりです。

  • 入力フォーマットやルールを統一し、誰でも同じ処理ができる環境を整える
  • OCRやクラウド会計、RPAなどのシステムを活用して、手作業を極力減らす
  • 承認ルートやチェックポイントを見直し、効率的に誤りを防ぐ
  • マニュアル整備や担当者ローテーションで属人化を避ける
  • ミスを定期的に振り返り、改善サイクルを回す

つまり、記帳ミスは「人の能力」ではなく「業務設計の問題」と捉えることが解決への第一歩です。
小さな改善を積み重ねることで、記帳精度は確実に高まり、経営にとって信頼できる数字を提供できるようになります。

👉 記帳ミスを「仕組みで防ぐ」視点を取り入れることが、会社の成長と信頼性を支える大きな一歩となるでしょう。

 

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